歯学部での勉強ってなにするの?低学年編 |なかもず松浦歯科医院

歯学部での勉強ってなにするの?低学年編

明けましておめでとうございます。松浦歯科クリニック歯科医師の後藤田です。
令和2年となりました。皆さまにとって、素晴らしい年となりますように願っております。

さて、今回から3回にわたって歯学部での勉強はどんなことをするのかをお話ししたいと思います。歯科医師になるためには、必ず通らないといけないのは歯学部です。大学を6年間通う必要があります。いわゆる歯科医師養成のための学校です。

まず今回は、低学年での勉強についてお話をしたいと思います。

【一般教養科目】

1年生では、どこの大学でもどの学部でも一般教養科目を勉強します。語学、人文科学、自然科学、社会科学、体育などです。

僕の出身大学では、語学は英語とドイツ語、人文・社会科学では社会学と法学と倫理学、自然科学では数学、物理学、生物学、化学、コンピューター、そして体育などがありました。歯科大学のような単科大学であると授業は選択することができず、決められた科目を全て受けるという感じで、すでに時間割がきまっていました。中学校の時間割のような感じです。
そして、プレ歯科医学というかんじで、実習や講義がありました。

歯科材料の学問、入れ歯をとりあえず作ってみる実習、歯の彫刻をとりあえずやってみる実習、大学病院でお互いの問診をとりあえずやってみる実習などなど。一般教養の中に専門科目でやることを混ぜてくれて、これから歯科医師を目指して頑張らないといけないと身体に叩き込まれました。それはこれからのモチベーションへと繋がりました。

【基礎歯科医学】

2年生になると専門科目が始まります。
専門科目には基礎系と臨床系に分かれます。2年生では、基礎系専門科目がスタートします。

・歯科理工学:歯科材料について
・生理学:正常な人体について
・生化学:人間にある物質について
・細菌学:細菌、ウイルス、真菌について
・薬理学:薬について
・解剖学:人体を構成する臓器や骨格について
・組織学:人体を構成する細胞
・衛生学:病気や予防などを、社会学的に学びます。
・病理学:病気について

歯科理工学・実習

歯科治療で用いる材料について勉強します。

よく用いるのが銀歯です。銀歯には金が12%用いられていますので、実は金合金と呼ばれています。といっても、金色をしていないのは大半が銀で、パラジウムと呼ばれるレアメタル(希少金属)も含まれています。

他には、白い詰め物もあります。これはコンポジットレジンと呼ばれるプラスチックのようなもので、この中には二酸化ケイ素と呼ばれる目に見えないくらい小さな石がたくさん入っています。それで、強度を保っています。

他にも、接着剤や光、色んなことを勉強します。材料の性質を知らずに治療しても壊れてしまったりしますので、大変重要な講義となります。実習では、硬さを調べたり、実際に銀歯を作ってみたりします。

生理学・口腔生理学・実習

人体の正常な仕組みを勉強します。それぞれの臓器や神経、骨格などがどのような役割を持っているのか、それが人体にどのような影響を与えるのかを勉強します。まずは全身からの勉強です。

例えば、人間の血圧を正常に保つのはどのような仕組みなのか、血圧のセンサーとなるのはどの部分なのかという具合です。腎臓で血圧は調整します。しかし、センサーは心臓から全身へ血液を流す通路となる大動脈にあります。

そして、全身の勉強が終わると口腔内にと差し掛かります。例えば、唾液を作り出す仕組みです。口腔内には唾液を生み出す唾液腺と呼ばれる唾液の泉がたくさんあります。三大唾液腺と呼ばれるものがあり、耳下腺・顎下腺・舌下腺といいます。それぞれに役割が異なり、出てくる唾液の性質も異なります。他にも 小唾液腺とよばれる小さな唾液の泉がたくさんあります。そのようなことを勉強します。

実習では、筋肉に電気を流して動く様子を観察したり、自分の血液を用いて血液型検査したり、血糖値を測ったりしました。

生化学・口腔生化学

臓器や組織から出てくる物質についての勉強です。全身から勉強していきます。

例えば、膵臓から出てくる有名なホルモン「インスリン」があります。インスリンにはどのような作用があるのかというのを勉強します。

そして、口腔では先程話しました唾液が有名です。それぞれの唾液腺から出てくる唾液の特徴や成分を学びます。唾液の中には、最近有名な虫歯菌をやっつけてくれるラクトフェリンやネバネバ成分のムチンなどたくさんの物質があります。そんなことを勉強します。
実習では、唾液の成分を調べたり、アミノ酸を調べたりしました。

細菌(微生物)学・口腔細菌(微生物)学

口の中にはたくさんの細菌がいます。一説では1000種類とも言われ、まだ解明されていない細菌も沢山います。全身に悪さをする病原性大腸菌などから、虫歯を引き起こすストレプトコッカスミュータンスと呼ばれる菌、歯周病を引き起こす菌など、沢山の細菌やウイルス、真菌(カビ)の勉強をします。
実習では、細菌培養を行なって観察しました。

薬理学・歯科薬理学

歯科で使う薬だけでなく、全身疾患で用いる薬などの作用や成分を勉強します。患者さんは色んな薬を服用されています。その薬と歯科で使う薬との飲み合わせで悪い作用をしてしまう場合があります。また、治療に影響が出てくる可能性がありますので、患者さんに影響が及ぼされないように薬の作用を勉強します。安全に薬を処方するためです。

例えば、血圧を下げる薬にはたくさんの種類があります。しかしながら、その中には歯茎を腫れさせる副作用のある薬があります。私たち歯科医師は、高血圧で処方している医師に対して、別の高血圧の薬に変更は可能かどうかをお伺いするお手紙を送らなければなりません。
薬を飲んでいない人は少ないですので、しっかりと薬について勉強をする必要があるのです。

実習では、薬の働きや持続時間などを調べました。

解剖学・口腔解剖学

いわゆる人体解剖です。人体にはどのような臓器があるのか、血管や神経はどう走っているのかを勉強します。そして、実際に献体していただいた人体を解剖し、きちんと自分の目で確認します。医師と歯科医師を目指す学生は、実際に人体にメスを入れて、自分で臓器を摘出して手に触れて勉強します。

僕は半年間、集中的に解剖に立ち向かいました。メスを握って様々な臓器や筋肉、血管、神経を目の当たりにして、人体と生命の神秘を感じ取ることができました。と同時に、これから目指す歯科医師という職業に、大きな責任感が生じるという事を身をもって知ることができました。様々な実習を受けましたが、解剖学実習だけは一生忘れることはできません。

そして、人体解剖と共に歯の形態や口腔の周りにある骨や組織についても勉強します。歯の形態の勉強は治療に欠かせません。虫歯で削った歯を元の形にするためにも重要です。
実際の人間の歯を並べ直すのですが、なかなか難しかったです。今では見ただけでどこの歯なのかわかるようになりましたが。

歯冠彫刻実習

細長い石膏でできた棒がありまして、その棒の端っこを彫刻刀を使って歯の形にしていきます。そして、歯の形態を身体に叩き込むのです。そのような実習でした。
解剖学で学んだ歯の形態の知識をカタチにするのです。

昔の歯科医師国家試験では、この彫刻が実技試験で採用されていました。今は廃止されましたが、歯の形態を頭と身体に叩き込まないと、虫歯の治療をした時に元の形に戻すことができません。この実習はすべての歯学部歯科大学で行われているわけではありませんが、非常に重要な実習で、歯科医師の基本となるものです。

組織学・口腔組織学

臓器や血管、神経、骨など目で見てわかる学問が解剖学ですが、顕微鏡で見る解剖学が組織学になります。人体の全ては細胞という小さなもので構成されていて、それぞれの臓器や血管によって構成される細胞には特徴があります。どのような細胞の集まりなのかを勉強するのが、組織学です。

私の大学では、組織学はノート提出が義務となっています。僕のノートが後輩への参考になるということで、最初の授業で「先輩のノート例」として紹介されています。幼い字を書く僕としては恥ずかしい限りなのですが(笑)

「後藤田さんのノート見ました。すごいですねー!」とよく後輩から言われた記憶があります。
実習では、様々な臓器の組織片を顕微鏡を用いて観察しスケッチをしました。

衛生学・公衆衛生学・口腔衛生学

病気にかかる人にはどのような生活習慣があるか、病気の人や健康な人の統計を取って、社会科学的に病気の予防を目指すのが衛生学です。
例えば、がんの余命や5年生存率などがそうです。がんにかかってどれくらい生きることができるのかというのは、過去にそのがんにかかった人がどの程度生存することができたかの統計からなのです。また、5年間生存する確率は、同じく以前に同じがんにかかった人のうち、どのくらい5年間生存している人がいたかを数えたことによって導き出されています。

また、がんにかかる人は2人に1人と言われています。これは、がんにかかった人の統計をとってはじき出した数字です。病気の予防には、薬や治療法などが頭に浮かびやすいですが、実は統計をとって机上で考えるということも非常に重要なのです。

また、ある地域で◯◯という病気がよく起こっているということがあれば、食べ物や土などの環境、生活習慣などを調べます。そして、その原因を突き止めるとうい訳です。フィールドワークや統計というのは、実はとても重要なのです。

実習では、下水処理場を見学したり、諏訪湖の水の水質検査をしたり、電動歯ブラシと手用歯ブラシとの比較などをしました。

病理学・口腔病理学

人間は誰しも病気になったり、怪我を負います。一生病気に縁のない人はいません。しかしながら、病気と一言でいっても色んなものがあります。全身疾患から虫歯まで様々な病気があります。それらについて学びます。

症状や原因だけでなく、顕微鏡で病気にかかった細胞はどのようなものなのかということまで勉強します。病気の数はたくさんありますので、覚えることが多くて大変です。しかし、病気の知識がない歯科医師だと病気を見逃すこともありますので、患者さんに不利益が生じます。膨大な知識を詰め込む必要があり、本当に大変な学問です。

実習では、実際に病気にかかった組織片の顕微鏡での観察とスケッチを行ないました。

これらの学問には、全てと言っていいほど実習があります。講義で学んだ知識を実習で確認して頭に叩き込む、本当に大変な分野です。しかしながら、医師と歯科医師には患者さんに対する多大なる責任がありますので、膨大な知識を身につけなければいけない義務があるのです。

現在、私も松浦歯科クリニックにて歯科治療を行なっておりますが、これら全ての学問に基づいて治療を行なっております。基礎系というだけあって、本当に治療の基礎となる学問です。どの先生方も、この基礎歯科医学に基づいて治療を行なっております。

それでは、次回は実際の治療における臨床系の勉強についてお話しします。

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