こんにちは、なかもず松浦歯科・矯正歯科歯科医師の後藤田です。
前回から歯学部での勉強はどんなことをするのかをお話ししております。
今回は、中学年で勉強する内容についてご紹介します。
歯科医師になるためには、医師と同じく6年間大学歯学部で学ぶ必要があります。口腔だけで6年間も必要なのかと思いますが、歯科医師とはいえ全身について学んでから口腔に対応する必要があります。また、歯科治療の技術を習得する必要もあります。実は6年では足らないくらいなのです。ですので、医師と同じく、人体解剖があり、臨床実習があり、国家試験があり、そして卒後臨床研修医制度もあるのです。
その中盤である中学年では、実際の歯科治療について学びます。
【臨床歯科医学】
基礎歯科医学の勉強を習得しますと、実際の歯科治療に直接関わる勉強を始めます。
・保存修復学・実習:虫歯の治療、詰め物
・歯周病学・実習:歯周病の治療
・歯内療法学・実習:歯の神経の治療
・全部床義歯学・実習:総入れ歯
・部分床義歯学・実習:部分入れ歯
・冠架工義歯学・実習:被せ物、ブリッジ
・歯科麻酔学:局所麻酔、全身麻酔など
・歯科放射線学:レントゲン、CT、MRI、超音波など
・口腔外科学:腫瘍、口腔内疾患、抜歯
・小児歯科学・実習:子供の治療
・高齢者歯科学:高齢者の治療
・障がい者歯科学:障がい者の治療
・摂食嚥下療法学:食事の飲み込み
・歯科矯正学・実習:歯の矯正
・法医歯学・実習:身元確認や事件など
・口腔インプラント学:インプラント治療
・医療面接法:問診、対応
保存修復学・実習
歯科治療の中で最も頻度のある虫歯の治療に関する勉強です。
これが出来ないと歯科医師ではないと言われるくらいです。虫歯一つにしても、患者さんそれぞれでいろんな虫歯があります。部位も違いますし、年齢によっても虫歯の種類は変わります。それらの治療方法も変わってくるのです。虫歯以外にも知覚過敏や外傷、プラスチックや金属の詰め物、そしてホワイトニングなどの勉強もします。
実習では、マネキン相手に虫歯の治療を行います。まずは器具の名前を覚えることからスタートします。そして、マネキンについた人工歯を削り、虫歯治療を行います。これは歯科医師の基本となり最も多い治療となりますので、驚く程厳しい実習であったのを今でも覚えています。
虫歯(う蝕)
歯周病学・実習
虫歯に対する予防の意識はここ数十年で非常に高まりました。
虫歯に罹患したことがある歯の本数もかなり減少しました。そして、虫歯が原因で抜いた歯の本数もかなり減少致しました。その代わりに増加したのは歯周病です。歯周病は歯がないと起こりえない疾患です。残っている歯の本数が増えたせいで、歯周病に罹患する患者が増加しました。
患者数も多く、40歳以上の80%は罹患していると言われています。歯周病と一言で言えども、色んな原因があり、色んな対処があります。歯周病とは、歯周炎と歯肉炎の総称です。歯茎の腫れから、歯がぐらつくことまで、いろんな症状があります。ですので、一つの病気が一つの学問となっているのです。歯周病が進行すると歯がグラグラしたりうずいたりして、最終的には抜けてしまいます。
歯周病は歯科医院でのクリーニングで予防することができます。美容院に行く感覚で歯科医院でクリーニングをしましょう。
実習では、歯周病の検査、歯石除去、歯周外科手術などをマネキンを用いて行います。また、豚の顎を用いて実習を行います。
歯内療法学・実習
虫歯が進行して、歯の中にある神経まで到達してしまうと、神経を抜く治療をしなければなりません。
その原因と対処について学ぶ学問です。神経の治療をすると歯は脆くなります。枯れ木のようにパキッと歯が割れてしまうこともあります。全身疾患と同様で、歯の疾患も早期発見早期治療が大切です。年3〜4回の定期検診にお越し下さい。
実習では、実際に抜け落ちてしまった人間の歯を用いて行いました。まずは歯に穴を開けて神経のある部屋まで貫通させます。
そして、根っこの中の神経や血管を専用の器具で除去します。かなり手こずった記憶があります。
全部床義歯学・実習
総入れ歯の作り方について学びます。部分入れ歯と違い、針金をひっかける歯がないため、総入れ歯は歯茎や口の中の天井部分に吸着する必要があります。当たり方によっては痛みが出ることもあるがありますが、当たらないとすぐに外れてしまいます。
ですので、非常に難しいんです。調整も何度も必要となります。また、口腔内の粘膜は常に変化しますので、それに対応させなければなりません。
どのように製作し、どのようにメインテナンスを行えばいいのかを学びます。
実習では、実際に総入れ歯を作ります。1年生の時に、かなり適当な入れ歯を作ったのですが、その時と比べると本格的な入れ歯になっていたので、4年間で成長したのがよく分かりました。
部分床義歯学・実習
部分入れ歯の作り方について学びます。残っている歯に針金のようなものを引っ掛けて入れ歯とします。抜けた歯の部分の歯茎と針金が引っかかっている歯とで支える必要があります。設計を間違えると、入れ歯がぐらつくので粘膜や歯に大きな負担がかかります。ですので、設計から製作までしっかりと勉強します。
実習では、実際に設計をして、針金を鋳造して部分入れ歯をゼロの状態から製作しました。歯にひっかける針金を曲げるのが非常に難しかったです。
冠架工義歯学・実習
虫歯になった歯の被せ物、1〜2本だけ抜けてしまったところの両側の歯を土台として橋渡しのような被せ物をつくるブリッジというものについて学びます。入れ歯と違って、お手入れは楽ですが、土台となる歯の負担は大きくなります。
健康な歯を削らないといけないというデメリットもあります。どちらがいいのか難しいですが、患者さんにとって良いものとなるように作らなくてはなりません。
なお、抜けた部分によってはブリッジが出来ない場合もあります。
実習では、模型の歯を削ってブリッジや被せ物を入れるための土台づくり、そして金属を溶かして鋳造し、患者さんに装着するものと全く同じものを製作しました。
歯科麻酔学
虫歯の治療に使う局所麻酔から、手術でつかう全身麻酔まで、全ての麻酔について勉強します。また、鎮静法という意識をボーッとさせる方法についても学びます。なかもず松浦歯科・矯正歯科では、笑気麻酔という鎮静法を導入しています。
鼻マスクで笑気という気体を吸うことにより、ボーッとさせます。それにより、歯科治療の恐怖感が減少します。また、鎮痛作用もあります。
歯科放射線学
歯科では切っても切れないものがレントゲンです。レントゲン無しでは、診断や治療計画の立案ができません。歯科医師は歯や骨の専門家です。硬い組織を主に診る必要がありますので、レントゲンは絶対に必要なのです。
ここでは、レントゲンの仕組みから、診断まで勉強します。また、放射線を用いないMRIや超音波検査などについても勉強します。歯科の放射線は日々宇宙や地面から受ける放射線の3日分程度です。詳しくは、以前に書きましたブログをご参照ください。
口腔外科学
口腔内にできる腫瘍や病変、抜歯について勉強します。代表的なのが口腔ガンです。実は、口腔ガンの治療は歯科医師が行います。病院にある歯科口腔外科に在籍しているドクターは歯科医師なのです。口腔ガンだけでなく、良性腫瘍や病変までありとあらゆる口腔内の病気について学びます。
小児歯科学・実習
子供の歯科治療について学びます。また、子供特有の口腔内の病気や先天性疾患なども学びます。子供は、大人と違い我慢することが苦手です。じっとしていることも難しいです。その子供の治療は、大人とは違います。その対処と方法などについて学びます。
当院では、頑張ったお子様にガチャガチャ券を1枚渡しております。3枚集めると1回ガチャガチャをすることができます。このようにご褒美を与えることも歯科治療を円滑に行う上で重要です。また、頑張れなかった場合には、ガチャガチャ券はお渡ししません。頑張ることの大切さを身につけてもらうためです。保護者様のご理解を宜しく御願い致します。
また、叱る場合もあります。歯科医師は、お子様が嫌いで叱るわけではありません。その時の感情でイライラして叱るわけでもありません。理論立てて必要と考えて叱るのです。叱るということは非常に重要なのです。こちらもご理解のほど御願い致します。
また、ぐずってしまう場合は母子分離が非常に重要となります。保護者様にとっては心配であると思いますが、歯科医師はじめ全てのスタッフはプロフェッショナルです。お任せいただければ幸いです。
これらは、全て小児歯科学のエビデンスに基づいて行われていることなのです。学術的にも有効なのです。
実習では乳歯が早くに脱落したときに使う装置の製作や、乳歯の虫歯治療などを模型に対して行いました。
高齢者歯科学
高齢者は、全身疾患を複数持っていることが多く、免疫力も下がっていることが多いです。高齢者の特徴を学び、歯科治療においてどのように対応していくのかを学びます。高齢者向けではありますが、有病者への歯科治療についても勉強していきます。
高齢者や有病者は服薬していることが多いので、薬の作用や病気の病態などに合わせた治療が必要となります。基礎で学んだことを最大限に利用した治療が必要となります。
障がい者歯科学
障がいをお持ちの方に対する歯科治療について学びます。身体的な障がい、精神的な障がいなど、様々なハンディキャップを背負っている方はたくさんおられます。歯科医師はそれぞれの障がいをお持ちの方の様々な特徴を理解しておかなければなりません。
特徴を知っているからこそ、それぞれの方に合わせた治療を提供することが可能なのです。
摂食嚥下療法学
最近、医療の中で話題になっている摂食嚥下。ご飯を食べてゴックンと飲み込むまでのことが難しい人が高齢者に多くいます。誤嚥(食べ物が気管に入る)をしてしまうと誤嚥性肺炎になり、死亡してしまうこともあります。高齢者の死因ベスト5に肺炎が入っています。これは、誤嚥性肺炎が理由です。
歯科医師は口腔内のスペシャリストです。食べることは口から始まりますので、美味しく食事を楽しむためにも、この学問はこれからの医学、歯科医学に重要とされています。
歯科矯正学・実習
歯並びを綺麗にする歯科矯正について勉強します。歯並びは乳歯の脱落時期、歯の土台となる骨と歯の大きさの関係、舌とほっぺたの力関係などによって決まります。また、歯列不正を引き起こす先天性疾患もあります。
それら全てを踏まえて、矯正の計画を立てます。矯正は長い期間かかります。少しずつ歯を移動させる必要があるからです。
実習では、歯並びの悪い模型の歯を製作し、設計、歯面に合わせたワイヤーの製作、歯の動く様子などを体験しました。
法医歯学・実習
御遺体の身元確認のにはたくさんの方法があります。その中でも、歯の治療痕から身元を割り出すのが最も効果的です。歯科医院のカルテやレントゲンに残っているデータから割り出します。また、死因なども歯からわかることがあります。そのようなことを学ぶのが法医歯学なのです。
よくテレビドラマで扱われている司法解剖などもこの分野になります。
東日本大震災で身元不明の方がたくさんいました。その方をご遺族の元に早く戻してあげために、たくさんの歯科医師が歯科治療痕から身元を明らかにするように頑張りました。
実習では、カルテからどの人の身元なのかというのを探します。また、学生同士で口腔内の治療痕を調べて診療録に記録します。
口腔インプラント学
残念ながら抜け落ちてしまった歯があった部分に、人工歯根(歯科インプラント)を埋め込みます。その根っこの上にダミーの歯を置くことによって今までと同じように噛むことができるようになります。それがインプラントです。
簡単に言うと、骨にネジを埋め込み、上に歯の代わりになるものを置くと言うことなのですが、骨の中には空洞や血管、神経があるので、簡単にネジを埋め込むというわけにはいきません。徹底した検査と診断、そして緻密な治療計画が必要となります。インプラントを長持ちさせるためには、口腔内環境を良くしておく必要があります。インプラントを入れれば終わりというわけではありません。患者さんの協力が必要不可欠となります。
医療面接法
歯科でも医科でも、初診ではまず問診を行います。患者さんの訴えに真摯に向かい、正しい診断と適切な治療計画を立てなければなりません。いかに問診で正しい情報を引き出すかというのが医療面接です。
問診なんて簡単そうに思えるかもしれません。しかしながら、これが患者さんとドクターとの第1歩となりますので、非常に重要なのです。問診こそが、医療の柱となります。今まで学んだ知識を総動員して、一瞬で治療計画を導くのが歯科医師の仕事です。
このように、歯学部ではたくさんの事を学びます。
口腔を専門とする歯科医師を養成するのが大学歯学部や歯科大学です。しかしながら、口腔は身体の一部です。全身の知識を持って口腔内の診療を行うのが今の歯科医師です。学ぶ量は膨大です。基礎系の知識を持ちながら臨床系の知識を用いて、お互いを連携させながら診療をしなければならないのです。
なかもず松浦歯科・矯正歯科には、院長を始め、たくさんの歯科医師が診療に従事致しております。患者さん全員に満足していただけるよう、日々研鑽致しております。お困りのことがございましたら、遠慮なくご相談ください。